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7人制ラグビー日本代表 坂井克行:インタビューvol.1「"究極の鬼ごっこ"7 人制ラグビー」

2019 年、自国開催のワールドカップでベスト 8 進出の快挙を成し遂げた、ラグビー日本代表。チームスローガンの「ONE TEAM」が2019年の流行語大賞に選ばれ、巷に「にわかファン」があふれるなど、日本はかつてないラグビー熱に包まれています。来る夏に開催される東京オリンピックでは、7 月 27 日から 8 月 1 日にかけての 6 日間、もう 1 つのラグビー「7 人制ラグビー」が行われます。一般には馴染みの薄いこの競技。その日本代表として最多出場記録を持つ、「ミスターセブンズ」坂井克行選手に、その見どころを語って頂きました。

1988年9月7日生まれ 三重県出身 身長172cm/体重85kg
三重県立四日市農芸高校でラグビーを始め、早稲田大学に進学、現在は豊田自動織機シャトルズに所属。2010年、大学4年時に召集されて以来、10年以上に渡り7人制ラグビー日本代表で活躍する「ミスターセブンズ」。ピンポイントで蹴り上げるキックオフのドロップキックなどを武器に、2016年リオ五輪では日本代表の4位入賞に貢献した。7人制日本代表での出場試合数は歴代最多。

――まず、坂井選手ご自身の競技歴を教えて下さい。

ラグビーを始めたのは、高校生の時でした。中学までサッカーをやっていたのですが、そこで挫折しました。サッカーで全国大会に出場したかったのですが、僕の実力では、地元三重県トップの実力校である四日市中央工業高校に行っても、レギュラーになれないと思いました。でも、人生の中で、思い出として全国大会に出たい、1 勝ぐらいしてみたいとも思っていました。そこで選んだのがラグビーです。三重県では、ほぼ全員が高校からラグビーを始めます。実際、中学までサッカーで万年ベンチだった兄ですら、高校からラグビ ーを始め、レギュラーになりました。そこで、「これならいけるんじゃないか?」と思ったのがきっかけでした。

――7 人制ラグビー日本代表となった経緯について教えて下さい。

毎年春、YCAC(YOKOHAMA COUNTRY & ATHLETIC CLUB)という、横浜のクラブ が、7 人制の大会を開催しています。その大会に、大学 4 年生の時に出場しました。2010 年のことですが、その時、当時 7 人制日本代表の監督だった村田亙さんから、代表の合宿 に参加してくれないかと声をかけられたのが最初の切っ掛けです。それ以前は、遊びや、 部内マッチのような形や、15 人制の練習の一環としてやったことがあるという程度で、本格的に取り組んだことはありませんでした。

――代表に声をかけられた時の感想は?

「......まさか......」、本当にそんな感じでした。その前年の 2009 年に、2016 年のオリンピ ック競技として採用されることが決定していたので、もしかしたらオリンピアンになれるのではないかとも思いました。漠然としたイメージしか浮かんできませんでしたが、「まさ か」と思うのと同時に、オリンピックを想像したことを、今でも覚えています。

――15 人制と 7 人制の違いについて教えて下さい。

基本的なこととして、15 人制と同じ広さのフィールド(※通常は 100m×70m)を使い、1 チーム 7 人でプレーします。ほぼルール同じです。試合は 7 分ハーフで行われます。前半 7 分、ハーフタイム 2 分、後半 7 分です。スクラムや、選手同士のぶつかり合いは、ラグビーの魅力だと思います。ですが、7 人制の魅力で、15 人制との大きく違うのは、相手との抜きあいが多く、ゲームのスピードが速いことだと思います。それでいて、15 人制ラグビーの魅力である、ぶつかりあいの要素も兼ね備えています。「究極の鬼ごっこ」、これがセブンズラグビーです。

――15 人制と同じ広さのフィールドを、少ない人数で使う。かなりきつそうです。

初めてやった時は、地獄の 7 分間だと思いました(笑)。ある程度プレーが続き、笛がなっ て時計を見たら、「まだ 3 分しか経っていないのか!」と。もう 7 分を超えたぐらいの感覚なのに、まだ半分も経過していませんでした。それなのに、もう自分はバテバテ。「こんなスポーツがあるのか!?」と思いました。

――特にハードなのは、どういったところでしょう?

15 人制の場合、トップスピードで走る距離は意外と短く、大半の場合、長くても 20m から 30mぐらいだと思います。ですが、セブンズの場合、それは最低距離であって、60m や 70m 走る時もあります。15 人制で走る倍の距離を、しかも、より速いスピードで走ります。15 人制の場合だと、6 割、7 割のスピードで走ることが多いですが、セブンズでは 8 割 9 割、 場合によってはトップスピードでその距離を走らなければなりません。まさに地獄の 7 分 間となるわけです。

――選手の特性も違ってきますね。

15 人制では、お相撲さんに近い体型の選手もチームに何人かいますが、7 人制には、細身で足が速く、体力のある選手が適しています。身長の高い選手が向いているポジションもあります。

――ご自身は、最初から 7 人制向きだったのでしょうか? それとも、プレーを続ける中で、 変わっていったのでしょうか?

元々、人を抜いたり、ちょこまか動いてディフェンスを翻弄したりするプレーが、15 人制 でも得意でした。最初に 7 人制代表に声をかけてもらった時、そうしたプレーを期待されているのだなと思いました。

――7 人制で「特にここが面白い!」と思うところを教えて下さい。

プレーが継続する時間、インプレー時間と呼ぶのですが、これを長くするルールが採用さ れています。例えば、15 人制では、2015 年の W 杯後、五郎丸選手のゴールキックが話題となりました。あのゴールキック、15 人制では、ボールをセットしてから 60 秒以内に蹴るというルールがあります。セブンズの場合、ドロップキックと言って、ボールを地面に落としてバウンドさせ、それを蹴るのがルールです。なぜかというと、時間を短縮させるた めです。それも、トライ後 30 秒以内に蹴らなくてはなりません。会場のビジョンにカウン トダウンが表示され、厳密に計測されます。更に、このトライ後のゴールキックを蹴り終わってから 30 秒以内に、次のプレーのキックオフをしなければなりません。その秒数もカウントダウンされます。これが守られなければ、相手ボールになってしまいます。僕は、ここが 1 番大きなルールの違いかなと思っています。

――昨年の W 杯で、「にわかファン」と呼ばれる層が増えました。7 人制は、にわかファンが見ても楽しめる競技でしょうか?

にわかファンには、持ってこいのスポーツだと思います。ボールを持って走り、相手を抜くのは、見ていて誰もが凄いと感じるプレーだと思いますが、逆に、トップスピードで足の速い相手の選手に追いついて止めるのも、見ていてわかりやすい面白さだと思います。まさしく、にわかファンの観戦にピッタリのスポーツです。

――会場の雰囲気は、いかがでしょう?

日本では、静かにラグビーを見る文化が定着しています。いい文化だなと思います。ですが、セブンズの場合、どちらかというと、お祭り騒ぎです。ハーフタイムには凄い音量で音楽が流れますし、試合中のトライ後にも音楽が流れ、凄く盛り上がります。世界の大会では、どこの国を応援するというわけでもなく、みんなビールを片手に、今行われている 試合そのものを応援する、そんな文化があります。

――1 日中試合が続き、しかも 2 日 3 日かけて大会が行われますね

1 日に何試合も行われるのがセブンズですので、強いチームの試合を、1 日に何試合も見ることができます。また、セブンズは番狂わせが起こりやすいとも言われていて、ボロ負けしたチームが、2 時間後、3 時間後の試合に勝ってしまうということも起こります。応援している特定のチームが 1 度負けても、その試合を再び見ることができます。1 日中ラグビー を楽しめることも、セブンズの魅力の 1 つだと思います。

――ご自身は、15 人制と 7 人制、どちらがやっていて楽しいですか?

僕はセブンズです(笑)。僕の最も得意な分野が活きることが、15 人制よりも 7 人制の方が 多いという気がしています。それは、抜き去るプレーや、自分から仕掛けてディフェンスを混乱させたりするプレーです。

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